SaaSがISVのビジネスに起こす変化:移行(の損得)を見極める(Webinar抄訳)

Windows Azureの製品サイトにpartnersページがあります。

http://www.windowsazure.com/en-us/community/partners/
英語表記/日本語表記の切り替えは左下の言語設定で選択可能です。

このなかの”Learn about it”というセクション(日本語では「詳細情報」セクション)に
“How SaaS Changes an ISV’s Business”というシリーズのWebinarが6本リンクされています。

いずれもビジネス系の方に向けた内容です。以前、この中で一番視聴されている”The Sales Process” につい紹介しましたが、今回は最初の1本、”Accessing the Shift”の簡単な訳です。

(日本語訳の各セクション末にある数字は、ビデオの経過時間目安です。赤太字は特に関心を持っていただきたい部分です)

以下抄訳

オンプレミスベースのアプリケーションを持つISV(Independent Software Vendor)であれば、SaaS(Software as a Service)モデルの登場によって技術、ビジネス両面での変化が起きていることでしょう。そこでもっとも注目を集めるのは技術面での変化です。なぜなら既存のオンプレミスアプリケーションを共有型のSaaSに移すのは簡単なことではないからです。

しかし、実際のところはビジネス面での変化の方が大変です。どう価格付けするか、どう売っていくのか、などソフトウェアビジネスをどう経営していくか、というコアの部分がSaaSへの移行にかかわってくるからです(0.35)。

これは大きな変化です。そしてこの変化を起こすのは単純ではありません。しかし、その大変さにも関わらずSaaSモデルを適用しようと考えるであろう二つの大きな理由があります。

まず、SaaSによってあなたのビジネスを成長させることができるかもしれない、ということです。これまでよりも小さな規模の顧客ベースにリーチできるようになるかもしれないですし、まったく新しい市場に参入できるかもしれません。

次に、SaaSを提供する競合からあなたのビジネスを守らなければいけないかもしれません。SaaSモデルは、新しい競争相手があなたの市場に入ってくることも可能にするからです。

例えばGoogle Appsについて考えてみましょう。SaaSを利用してマイクロソフトが確立したemailなどのオンプレミスのビジネス分野に攻撃を仕掛けています。この新しい競合に対抗する唯一の効果的な方法は、あなたの側も独自のSaaSを提供することかもしれませんーマイクロソフトがそうしたように(1.23)。

どのような理由からであれ、SaaSでサービスを提供するということはビジネスのやり方が変更になるということです。

まずはSaaSのメリットとリスクを理解することから始めるのが良いでしょう(1.34)。

ISVは、二つの側面からよく考える必要があります。顧客に対するメリットとリスクーなぜ顧客はSaaSアプリケーションを買うのか、または買わないのか。そして、あなたの会社に対するメリットとリスクです。

まず、顧客の側面から考えて見ましょう(1.51)。

顧客が通常SaaSアプリケーションで得られる最大のメリットは下記のようなものがあります。

まず、SaaSは導入期間を短縮します。なぜならオンプレミス環境へのインストールが不要だからです。自社のサーバーに何週間も何ヶ月もかけてソフトウェアを導入して設定する代わりに、組織はクラウドにあるアプリケーションに即座にアクセスすることができるのです。

また、SaaSは通常、ユーザー単位や月単位のような使用量に応じた課金体系を提供します。ですから顧客は使った分だけ支払えば良いことになります。これは好まれます。

SaaSアプリケーションは、オンプレミスのアプリケーションよりも財務リスクが少なくなります。多くのクラウドアプリケーションは、試用期間オプションを提供していますから、顧客は支払いを始める前にそのアプリケーションがビジネス価値を持つことを確認することができます。使った分だけ支払う従量課金体系は、大きな金額を前払いする通常のライセンス料金体系よりもリスクが小さいということも言えます(2.50)。

さらに他のメリットとして、SaaSはサーバーやIT部門の人材といったオンプレミスリソースの必要性を削減します。アプリケーションはクラウドで稼動しますから、顧客はハードウェアや、オンプレミスでアプリケーションを運用するためのスタッフに投資をする必要がありません。

最後に、SaaSアプリケーションはアップグレードを容易にします。SaaSプロバイダーは集中管理されたコードのコピーに対してアップグレードをするだけです。顧客が更新しなければならないオンプレミスのソフトウェアはないのです(3.23)。

SaaSがもしメリットしか提供しないのであれば、明日にでもすべての人が採用するでしょう。もちろん、そんなことはありませんー デメリットもあります(3.32)。

典型的なSaaS顧客にとって最も重要なリスクは次のようなものです。

SaaSを利用するということは、アプリケーションの可用性とセキュリティについて外部のプロバイダーを信用するということになります。たいていの場合、SaaSプロバイダがどのようにセキュリティを確保しているのかを顧客が詳細にわたって物理的に調べることは、許されていません。ですから顧客はSaaSプロバイダを信頼することを学ばなければいけません。この信頼を確立するのには時間がかかります。そしてしばしば、これがSaaSを採用する人々にとって最大の障壁になるのです。

SaaSは、自社環境の外にデータを保存することで法規制に関する懸念も生むことでしょう。多くの国で、ある種のデータの保存場所について法規制が定められています。SaaSアプリケーションのデータセンターが顧客の居住国とは異なる国にある場合は特に、この問題が生じます。

別の課題としては、SaaSアプリケーションはカスタマイズが限定されるということがあります。SaaSモデルでは、単一のマルチテナントアプリケーションを複数の顧客で共有するのが典型的です。マルチテナントはコストを低減しますが、顧客ごとに異なるソフトウェア環境を提供することは難しくなります。SaaSベンダーは通常多少の設定オプションを提供していますが、従来型のオンプレミスアプリケーションの方がカスタマイズ性は高いと言わざるを得ません(4.59)。

SaaSアプリケーションは既存のオンプレミスアプリケーションとの統合が難しい可能性もあります。同一のデータセンター内でのアプリケーション連携ですら簡単ではありません。いずれかのアプリケーションがクラウドで提供されている場合、統合はより難しくなります。

最後に、SaaSはオンプレミスアプリケーションよりもパフォーマンスが低下することがあります。これは、顧客とSaaSアプリケーションのデータセンターの間のネットワーク帯域が限られているときには非常によくある問題です。どれだけこのことが影響があるかは、地理的な条件に左右されます(5.34)。

SaaSはあらゆる顧客のあらゆるアプリケーションに適しているわけではありません。emailのようなSaaSへの移行が非常に容易なソフトウェアもあります - メリットがリスクを上回るものです。

しかし、厳しく規制されたデータを扱ったり、多くのカスタマイズを必要とするアプリケーションは、オンプレミスに残ります。SaaSは課題を解決する優れたソリューションとなりえますが、常に最善の選択肢とは限らないのです(6.01)。

顧客へのこれらのメリット、デメリットと併せて、SaaSはオンプレミスでソフトウェアビジネスをしてきたISVにとってのメリットとリスクももたらします(6.12)。

ここでも、まずメリットから見てみましょう。

まず、SaaSアプリケーションは新しい顧客層にリーチする可能性をもたらします。SaaSによって、これまでより小規模の顧客向けの低価格オプションを提供できるようになるかもしれません。まったく新しいビジネスに参入する機会が得られることもあるでしょう。

SaaSモデルでは、顧客の情報システム部門を通さずにBDM(Business Decision Makers)に対して直接サービスを販売することもできるようになります。SaaSアプリケーションはクラウドで稼働するので、アプリケーション要件を情報システム部門がサポートしないことによってあなたの営業活動が阻まれることはありません。

さらに考えられるメリットとして、SaaSアプリケーションは従来のライセンスモデルよりも売上予測を容易にするということがあります。ユーザー単位、月単位サブスクリプションのような典型的なSaaSの価格体系によって、従来のソフトウェアライセンスモデルのように出入りのある売上ではなく平準化された売上げを計上できるようになります(7.08)。

SaaSは共有型のマルチテナントアプリケーションなので、サポートコストも低減します。顧客ごとに異なるデータセンターで稼働する、別々のソフトウェア環境をサポートする代わりに、クラウドのデータセンターで運用しているコードの共有コピーをサポートすれば良いのです。

最後にSaaSは、顧客があなたのアプリケーションをどのように利用しているかについての情報を与えてくれます。アプリケーションを誰が使っていて誰が使っていないか、どの顧客がどの機能をつかっているか、など多くのことを知ることができます(7.40)。

しかし、顧客について考えたときと同様に、SaaSに移行するのはISVにとってリスクがないという話ではありません。

特に明らかな課題としては以下のようなものがあるでしょう。

まず、そして何にも増して、SaaSはビジネスの大きな変革を必要とします。価格体系、販売モデル、サポート、そして場合によっては、開発プロセスにすら新しいアプローチが入ってきます。モデルを確立しているISVが従来のオンプレミスソフトウェアビジネスからSaaSビジネスへ移行すると、かなりのギャップを体験する可能性もあります。

また、ソフトウェアベンダーは前もって本当の価値を示さなければならなくなります。顧客は通常、購入前にSaaS ソフトウェアを使ってみる機会を持ちますから、デモやディナーやディスカッションではなくソフトウェアに対する顧客自身の経験で購入意思の決定が下されるのです。

他の懸念事項として、SaaSの通常の課金体系では、売上の積み上げが減速するということがあります。従来のオンプレミスのライセンス体系では、あなたのソフトウェアのコピーを買う顧客がそれぞれ、それなりの金額の小切手を切って(投資して)くれました。

しかし、SaaSの世界では一般的なサブスクリプションモデル(購読型モデル)では、顧客はユーザ単位、月単位で少額ずつしか支払いません。最終的には同じ金額、またはより多くの金額を得ることができるかもしれません。ただし、入ってくるスピードはより遅くなります(9.05)。

SaaSはカスタマイズサービスを販売する機会を減らしてしまう可能性もあります。マルチテナントのアプリケーションだからといってカスタマイズをまったく許さないわけではありませんが、カスタマイズできる範囲が制限されることが多くあります。

自社製品のカスタマイズによって得られる売上が大きな比率を占めるISVの場合、SaaSへの移行はこの数字を小さくしてしまう可能性があります。

最後に、SaaSは販売に関する新しい課題を持ち込むかもしれません。SaaSのサービスは、パートナー経由ではなくサービスの作り手が直接売ることが一般的なので、いわゆるチャネルコンフリクトを生むことになります。

サブスクリプション式の価格体系を採用すると、パートナーと分け合う対象となる、顧客からの初期投資額も減ってしまいます(9.45)。

SaaSに目を向けないわけには行きません。でも、この分野では賢い意思決定をしたいとお考えでしょう。SaaSが大きなシェアをしめる市場もあれば、移行がゆっくりな市場もあります。

ISVはそれぞれがオンプレミスの製品をよく見極め、SaaSが各製品に対してどれだけのインパクトを持つのかを理解し、それから初めて熟慮した結果の意思決定をしてください。

何もしない、という選択肢はありません(10.13)。

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SaaSがISVのビジネスに起こす変化:移行(の損得)を見極める(Webinar抄訳)」への5件のフィードバック

  1. ピンバック: SaaSがISVのビジネスに起こす変化:営業プロセス(Webinar抄訳) | TANTO – poco a poco

  2. ピンバック: SaaSがISVのビジネスに起こす変化:簡易デシジョンツリー(Webinar抄訳) | TANTO – poco a poco

  3. ピンバック: SaaSがISVのビジネスに起こす変化:顧客、課金モデルと収入(Webinar抄訳) | TANTO – poco a poco

  4. ピンバック: SaaSがISVのビジネスに起こす変化:平均販売価格の影響 (Webinar抄訳) | TANTO – poco a poco

  5. ピンバック: SaaSがISVのビジネスに起こす変化:マーケティング、ソフトウェア開発、その他(Webinar抄訳) | TANTO – poco a poco

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